吉江 仁子
民事
① 2026年6月、国際的な科学誌に、宇都宮聡教授らの研究グループの新論文が掲載されました。CsMPの拡散パターンをこれまでにない高解像度で精緻に解明するものです。同論文の最大の功績は、福島県全図にプロットされた1~100の土壌採取地点と、その分析データ(表1)を広く公表したことです。これにより、プルーム(放射性物質を含む空気のかたまり)が通過した「あのとき」、大気中にどの程度CsMPが存在していたのかを知る客観的でアクセスしやすい手がかりが与えられました。
② この論文のデータセットは、私たちが2013年9月に提訴した「福島原発賠償兵庫訴訟」にとっても極めて大きな意味を持っています。私は、事故と避難の因果関係を論証する班にいます。
兵庫訴訟では、平成28年の土壌調査で原告らの避難元生活環境に高いレベルの放射能汚染を確認しましたが、そこからの「内部被ばくの現実的具体的危険性」の論証が現在の争点です。現在作成中の準備書面では、この論文から、原告らの避難元生活圏のCsMP汚染の実相を初めて定量化して主張しています。高い空気中最大個数を示した地域、空間線量率は比較的低くてもCsMPの飛散があった地域、CsMPの飛散は確認出来なかったが預託実効線量が高かった地域など、多様な汚染の実相と内部被ばくの可能性を明らかにしています。
③ あのとき、フクシマのみなさんは、自身や家族の体調不良を目の前にして手探りで避難を、あるいは、残留を決意しました。情報がない中でのそれぞれの苦渋の選択は、他方選択者の判断の合理性を減殺しあう関係にはないはずです。目に見えない未知の物質による内部被ばくを懸念し、葛藤の中で決意した避難の選択に、15年越しで科学が「解」を示しました。被ばくを「正しく恐れる」ためにも、ぜひ多くの人に知っていただきたい知見です。
④ 次回は、12月14日(月)14:30~ @大阪高裁本館2階大法廷、です。
是非、応援にお越しください。
表1

出典:Miyazaki et al., 2026, Journal of Hazardous Materials, Table 1

出典:Miyazaki et al., 2026, Journal of Hazardous Materials, Fig. 4(a)
以上